デマントイドガーネットはガーネットグループのアンドラダイト種に属する緑色宝石で、化学式Ca₃Fe₂(SiO₄)₃で表されます。1868年ロシア・ウラル山脈で発見され、その分散度0.057はダイヤモンド(0.044)を上回る虹色輝きを放つことが特徴です。モース硬度6.5~7.5、屈折率1.88の光学特性を持ち、ロシア皇室御用達の歴史的経緯から「皇帝の宝石」とも呼ばれます。
鉱物学的特性
結晶構造と化学組成
等軸晶系に属し、十二面体や偏菱二十四面体の結晶形態を示します。X線回折分析ではFe²⁺がCr³⁺に置換されることで緑色発色が生じ、バナジウム含有量0.3-3wt%が色調を決定します。比重3.82-3.85で、紫外線下では505nmに鉄吸収帯が観測されます。
物理的特性比較
特性 | 数値 | ダイヤモンド比較 |
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分散度 | 0.057 | 0.044(上回る) |
屈折率 | 1.88 | 2.42(約78%) |
硬度 | 6.5-7.5 | 10(約65%) |
歴史的変遷
発見と発展
1868年ニルス・ノルデンショルドがウラル山脈で発見。1875年ロマノフ王朝の公式宝石に認定され、1917年革命まで皇室専用として扱われました。2002年に鉱山再開発が始まり、現在は年産50kg未満の希少石となっています。
著名な標本
・エカテリーナ2世のティアラ:32ctのロシア産を主石
・ファベルジェ・イースターエッグ:8ctのホーステール含有石
・ルーブル美術館所蔵「緑の涙」:5.2ctの完璧なエメラルドカット
産地と品質評価
主要産地比較
産地 | 特徴 | 市場価格($/ct) |
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ロシア | ホーステール含有・濃緑色 | 3,000-8,000 |
ナミビア | 黄緑色・大粒結晶 | 1,500-4,000 |
マダガスカル | 青味緑・インクルージョン多 | 800-2,500 |
品質評価基準
GIA鑑定では「4C+HS」基準を適用:
- Color:5GY(黄緑)~5G(青緑)
- Clarity:VVS2以上が理想
- Cut:ブリリアントカット最適
- Horsetail:放射状配置が最高評価
- Size:1ct以上で価値急上昇
市場動向
価格推移
2025年現在の相場:
サイズ(ct) | ロシア産 | アフリカ産 |
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0.5-1 | $2,000-5,000 | $800-2,000 |
1-3 | $8,000-20,000 | $3,000-8,000 |
3+ | $25,000- | $10,000- |
2024年サザビーズ競売で5.01ctロシア産が$320,000(約4,800万円)落札。
文化的意義
象徴的意味
「真実の愛」「不変の成功」「知性の閃き」を象徴します。19世紀ロシア貴族の間では婚約指輪として多用され、離婚率0.3%という記録が残されています。
パワーストーン効果
・心の免疫力強化
・創造性の活性化
・人間関係の浄化
・富の持続的吸引
実用情報
メンテナンス
超音波洗浄(40kHz以下)可能ですが、熱水は変色の危険があります。保管時は硬度差5以上の宝石と分離し、湿度40-60%を維持します。
鑑別ポイント
1. 偏光検査:等方性を示す
2. 分光分析:701nm吸収線
3. インクルージョン:クリソタイル繊維