1. 物理的・化学的特性
- 化学組成:α-Al₂O₃(酸化アルミニウム)
- 結晶構造:六方晶系または三方晶系
- 格子定数:a=0.47588nm、c=1.2992nm
- ビッカース硬度:c面で1377、a面で1622
- 熱伝導性:温度により変化(-120°Cで115W/m・K、500°Cで13W/m・K)
- 化学的安定性:ほとんどの酸やアルカリに耐性
2. 光学的特性
- 透過波長域:0.23〜5.5μm
- VUVグレード材:0.15μm以上で50%以上の透過率
- 複屈折性:わずかに存在
- 発色原因:微量元素(青色は鉄とチタン、ピンク/赤はクロムなど)
3. サファイアの形成過程
- 主に広域変成作用による形成
- ゴンドワナ大陸衝突(約6.5億年前)による高温高圧作用
- マダガスカルGogogogo地域、インドKaru地域Kolar鉱山などが代表的産地
4. 非加熱サファイアの詳細
- 市場流通量:全体の約1%
- 特徴:
- シルクインクルージョン(針状内包物)の存在
- 有機的で柔らかな透明感
- 複雑なニュアンスカラー
- 複数の色合いの混在
- 識別方法:
- 顕微ラマン分光分析
- レーザートモグラフィ
- 赤外分光分析(FTIR)
- LA-ICP-MS分析
5. 産地別の特徴詳細
- カシミール:柔らかく上品な青色、ベルベットのような光沢、現在は枯渇
- ミャンマー(モゴック):透明感のある深い青色、多様な色合いが産出
- スリランカ:紫がかった青色、スターサファイアやパパラチアサファイアの主要産地
- タイ・カンボジア(パイリン):暗い青色
- オーストラリア:ディープブルー
- モンタナ:色が薄く粒が小さい
- マダガスカル:スリランカ産に類似
6. 歴史的に重要なサファイア
- スター・オブ・インディア:563.35カラット、約20億年前形成
- スター・オブ・アダム:1,404.49カラット、最大のブルースターサファイア
- ブラックスター・オブ・クイーンズランド:733カラット
- 英国王室の宝冠:「聖エドワードのサファイア」「スチュアートのサファイア」
- ダイアナ妃(現キャサリン妃)の婚約指輪